【短】知りたい。もう少し。


『青』の香りはもう、しない。


同じ『青』の香りをつけていた先生が退職した日の夜に、排水口に流したと言っていた。


愛する彼女と買った、同じ香水……。


初めてかいだ時、私はその香りに、勝手に『青』と名付けた。


なんとなく『青色』から漂う香りがあるとしたら、こんな感じ……と思って。


今の彼にはもうない『青』。

切なさを含んだ『青』。

もう1度かぎたいとは思わない。


あの香りは、私と凌に先生を思い出させる、苦しい香りだから。


でも『青』の抜けた彼は、どこか寂しげで。


何か物足りなそうにも見えて……。



< 8 / 45 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop