【短】知りたい。もう少し。
『青』の香りはもう、しない。
同じ『青』の香りをつけていた先生が退職した日の夜に、排水口に流したと言っていた。
愛する彼女と買った、同じ香水……。
初めてかいだ時、私はその香りに、勝手に『青』と名付けた。
なんとなく『青色』から漂う香りがあるとしたら、こんな感じ……と思って。
今の彼にはもうない『青』。
切なさを含んだ『青』。
もう1度かぎたいとは思わない。
あの香りは、私と凌に先生を思い出させる、苦しい香りだから。
でも『青』の抜けた彼は、どこか寂しげで。
何か物足りなそうにも見えて……。