いなくなる
雅樹は、パニックになりそうな自分の思考を考える事でかろうじて抑えていた。


・・・なぜだ?・・・なぜ、二人はいなくなった・・・?


・・・まだ、5時間目なのに・・・



「あっ!」



雅樹は、自分の携帯を取り出し時間を確認した。


・・・し、しまった!やられた!・・・


蒼ざめた表情で携帯を見つめている雅樹を見て、隆志は不安になる。

「ど、どうした?雅樹、なにかあるのか?」

雅樹は、携帯を見つめたまま、隆志の問いに答えなかった。


「ま、雅樹ってば!雅樹どうした!」


隆志の強い口調で、我に返った雅樹は暗い表情を2人に向けて絶望的な言葉を投げかけた。


「あの2人が、いなくなった訳が解ったよ。やはり授業中に5人ずついなくなるのは間違いない。いまは、もう既に6時間目の授業中なんだ!」


雅樹の言葉が理解できない、隆志は詰め寄るように問いかける。


「既に6時間目ってどういうことなんだよ!まだ5時間目のはずだろう?」


「やられたんだよ、アイツに。俺たちはいつのまにか暗示にかけられて5時間目の終了のチャイムに気づく事ができなかったんだよ」


「そんなバカな!授業終了のチャイムは今までちゃんと聞こえていたじゃないか」


「今までは、チャイムの音を消す必要が無かったから消さなかっただけだったんだろう。いや、逆にチャイムの音を消したりしたら不自然になるから消さなかっただけかもしれない。人の存在を消してしまうような暗示なのだからチャイムの音に気がつかなくすることなど簡単にできるんだ」




雅樹は、なぜこんな事になってしまったのか改めて冷静に考え直してみた。



・・・冷静に・・・?



・・・なぜ自分は、この状況でもこんなに冷静にいられるのだ・・・?





たしかに自分は、冷静に物事を判断できるタイプではあるが、このような異常な現象を目の当たりにしても冷静でいられるほど、強い心の持ち主ではない・・・


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