いなくなる
カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ



アイツは、自分達の存在を無視するように黒板に文字を書き続けている。

・・・そうか・・・そういうことか・・・


自分が、冷静に状況を分析して隆志たちに話し出したのも、全部アイツが自分に暗示をかけてさせたことだったのだ。


5時間目の終了時間までは10分も無かった。あのままであれば俺達は終了のチャイムの音に集中して、アイツの暗示にもかからなかったはずなのに、俺が話しだしたために3人の集中が終了のチャイムから離れてしまった。


全てアイツの思うままにされていたのだ・・・





・・・もう手段は選んでいられない・・・


今すぐにでも、この教室を飛び出すしか無い!


アイツを睨み付けている視線を隆志の方に向きなおすと、そこには眠っている隆志がいた!


「た、隆志!寝るな、起きるんだ!」


必死に肩を揺さぶり起こそうとするが、隆志は目覚めない。


「隆志!起きろ!起きろってばー!」


隆志は、人形のようになんの反応もせず眠り続けている。


雅樹は、いまにも泣きそうな表情で何度も隆志の頬を打ってみるが隆志は起きない。


「隆志・・・頼むから起きてくれよ!・・・幹男、どうしよう隆志が眠ってしまった」


「幹男・・・?」



雅樹は、隆志の隣にいる幹男に視線を向けると、絶望の淵に落とされたような感覚になる。



「い・・・いない・・・!」




< 51 / 61 >

この作品をシェア

pagetop