いなくなる
薄れゆく意識の中、雅樹の耳元に響く音がする。


カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ



カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ



カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ


・・・アイツのチョークの音・・・



・・・最後の、最後になんで・・・あの音が・・・?



カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ



・・・こ、この音・・・?



カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ



・・・ま、まさか・・・この音・・・



カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ



・・・い、いやだ・・・


カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ


・・・こ、この音は・・・


カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ



・・・いやだ・・・



カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ




カリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリカリ



教室内には、アイツのチョークの音だけがいつまでも鳴り響いている。



アイツ以外は、もう誰一人この教室には存在しない。





・・・雅樹も、いなくなってしまった・・・








キーンコーンカーンコーン♪



6時間目の終了を知らせるチャイムが教室に響き渡る。


カリカリカリカリカリ・・・・


アイツは、チョークで黒板に書き込む手を止めた。


そして、今まで使っていた白いチョークを赤いチョークに変えて。


黒板の端から端まで使って、力いっぱい大きな文字で書き込んでいった。


アイツは満足げに黒板を見つめ、振り返り誰もいない教室に一礼すると、そのまま教室を出て行ってしまった。



朝は、生徒たちで騒がしかった教室も、今は静寂に包まれている・・・




・・・もう誰も教室には、いない・・・


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