いなくなる
いなくなる
[放課後。3年C組]     ―PM:18:00― 




「ほら、美奈もう帰るよ!残っているの、私たちだけみたいなんだからさ!」       

帰り支度を手早くすませ廊下から美奈を急かす利沙。


「ちょ!ちょっと待ってよ、利沙」


おっとりした性格からなのか、美奈は帰り支度に手間とっている。  


「早く!早く!誰もいない教室って、なんだか不気味なんだから・・・」     


美奈は利沙の言葉に手を止めてしまう。


「もう、利沙 嫌なこと言わないでよ!」    


「ほら、ほら手が止まっている、もたもたしていたら置いてくよ!」


「えっ!嘘!やだー!」


今にも泣きそうな顔で、利沙を見る美奈。


「バカ、冗談よ。ちゃんと待っているから早くしなさい」


嬉しそうに利沙に笑顔を向け、帰り支度を済ませた美奈が廊下にいる利沙に駆け寄る。


「おまたせ!」


「美奈、忘れ物は無いよね?教室の鍵閉めるよ」




利沙が鍵を閉めようとした時に、廊下の向こうから利沙を呼ぶ声がする。


「鈴木ちょっといいかな?」


声の主は2人が所属する演劇部の顧問であった。


「あっ!はい」

鍵を閉めようとした利沙は美奈に鍵を渡す。


「美奈。ごめん鍵閉めといてくれる?それでちょっと待ってて?」


鍵を受け取り屈託の無い笑顔で答える美奈。


「はい!部長さん。待っているけど、もたもたしていたら置いてくよ」


「・・・もう」


苦笑いを見せ、顧問の方へ駆け寄る利沙。


美奈は教室の鍵を閉め利沙の方を見ると、利沙はまだ顧問と話し込んでいる。


美奈は利沙を待っているあいだ、何気なく3年D組の教室を覗き込んでみる。    


雅樹がいないかと、淡い期待を持ちながら・・・


しかし、もう教室には誰もいなかった。



「ちぇ・・・残念・・・」
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