風にのせて君へ
と、
走って音楽室に来たのはいいんだけど。
ドアの前に立ってみると、
今更ながら緊張する。
別に“付き合いたい”ってわけじゃないんだよ。
うん、ただ奏先輩が好きなだけで。
えーと、
だから奏先輩に思いを伝えて……
うん、それはした。
返事を聞いて、
奏先輩も同じ気持ちだったらいいなっていうやつ……なんだよ。
私は手のひらに書いた人の字を飲み込むと、ドアノブに手を掛けた。
ドアの向こうには、
優しい音が溢れていた。
あの入学式のときも、
今も。
話すとどうしても悪くなるその口調だって、
ピアノを弾くときは穏やかに微笑んでいる君。