風にのせて君へ


ドアの隙間から、
溢れだす旋律。


ピアノを弾いている奏先輩の表情は、見たこともないくらい穏やかで。


再確認。


私、奏先輩のこと好きみたい。



と、曲が終わった数秒後にこんな台詞が飛んできた。



「何、盗み聞きしてるんだよ」



私はドアの手前で返事をする。



「人聞き悪いですね」


「前もそんなことがあったから言ってるんだろ」



そういえば、そうでした。



「……で? 何か用か?」



平然と私に訊ねる奏先輩。


私はもしかしたら、と思い
恐る恐る奏先輩に聞き返す。



「奏先輩、私このあいだ音楽室で……」


「それが?」


「返事が……」


「は? 聞こえねえんだけど……」



もしかして、



もしかして。

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