桜、ふわふわ 2nd season
桜の花びらだ。

窓の向こうはベランダになっていて、そのすぐ側に大きな桜の木が植えてあるんだ。


この時期、2階のこの部屋は、窓一面がピンク色に見える。

就職と同時にオレはこのアパートで一人暮らしを始めた。

築30年は経っていて、設備なんか全然整ってないし、お世辞にも綺麗とは言えない。

不動産屋は、他にももっと良い物件があると言っていたけれど。

オレはこの景色に魅了され、最初に案内してもらったここに決めた。


「桜吹雪……すげぇ」

ポツンと呟く。


《桜?》

「うん」


カラカラ……と電話の向こうから音がする。

どうやら彼女も窓を開けたらしい。


《うちの庭にもあるよ、桜》

「きれい?」

《うん。でも、ちょっと怖いかな。だって、桜の木の下には……》

「死体が埋まってそうか?」


わざと低い声で言ってやる。


《もーやめて! 今、鳥肌立ったよー》

「あはは」


本気で怖がっている彼女がおかしくて、オレは声をあげて笑った。
< 17 / 19 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop