旦那様は社長
床にダイブした社長の努力も虚しく、それは社長の手をすり抜けて粉々に砕け散った。
「ああッ!!オレのグラスがぁぁぁあああああ!!」
社長が一番大事にしていた、オーダーメイドのエ○メスのグラス。
「ご、ごめん……」
きっとこのグラス1個で、ウン万円はするだろう。
弁償するなんて、簡単には言えない。
「ごめんなさい。悪気があったわけじゃ」
「当ったり前だ!狙ってやってたら、今すぐこの場で弁償してもらう。お前の身体でな」
顔を上げた社長の目がキラリと強い光を放つ。
こ、怖い……。
その目は本気だから、なんとか話題を変えようと必死に探した。
「あ!そう言えば!!」
なんて、わざとらしく手のひらをポンと叩いてみる。
「なんだよ」
怯みそうになるのを必死に堪えて言った。
「気になってたことがあって。あたしたちの結婚てフェイクだけど、跡継ぎとかってやっぱり生まなきゃダメなの?」
何の脈略もない話だけど、いつか聞こうと思ってた大切な問題だ。