旦那様は社長

床にダイブした社長の努力も虚しく、それは社長の手をすり抜けて粉々に砕け散った。


「ああッ!!オレのグラスがぁぁぁあああああ!!」


社長が一番大事にしていた、オーダーメイドのエ○メスのグラス。


「ご、ごめん……」


きっとこのグラス1個で、ウン万円はするだろう。


弁償するなんて、簡単には言えない。


「ごめんなさい。悪気があったわけじゃ」


「当ったり前だ!狙ってやってたら、今すぐこの場で弁償してもらう。お前の身体でな」


顔を上げた社長の目がキラリと強い光を放つ。


こ、怖い……。


その目は本気だから、なんとか話題を変えようと必死に探した。


「あ!そう言えば!!」

なんて、わざとらしく手のひらをポンと叩いてみる。


「なんだよ」


怯みそうになるのを必死に堪えて言った。


「気になってたことがあって。あたしたちの結婚てフェイクだけど、跡継ぎとかってやっぱり生まなきゃダメなの?」


何の脈略もない話だけど、いつか聞こうと思ってた大切な問題だ。


< 184 / 334 >

この作品をシェア

pagetop