旦那様は社長

それから数日。

出張中も社長は、毎晩あたしが寝つく前に電話をくれた。


《今何してた?》

「そろそろ寝ようと思ってた」

《自分の部屋?それともオレの部屋?》

「……」

《オレの部屋だな。そんなにオレが恋しいか?可愛いヤツめ》

「違うよ。こっちのがベッド広いから」


本当は違わないのに。

社長の残り香のあるこの部屋は、あたしの不安を和らげてくれる。


まるであの優しい腕に包まれているような気がして、とても安心できるんだ。


《素直じゃねーなぁ。オレはお前がいないともう眠れねーよ》

「え?」


胸がドキッとして『あたしがいないと』って言葉が素直に嬉しくて、自然と顔が緩んだ。


《お前の胸の感触、忘れそうだ》

「……は?」

《あぁぁ、お前の谷間で朝を迎えられたら、どれだけ幸せか》

「……谷間?」


あたしがいないと=谷間がないと


さっき、少しでも嬉しいと思ったあたしの感動を返してほしい。


《あぁぁ、あの胸にパフパフされたら、即イケるな》


ーープッ。


社長の妄想に付き合いきれず、あたしは頭にきて電話を切る。


こんな日も、たまにあった。


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