旦那様は社長

そんな平穏な日々が過ぎ、社長の帰国まであと3日と迫った頃、あたしを思いもよらない人物が訪ねてくる。


それは1階受付からの内線で始まった。


「はい。社長室、葉山です」


《あっ、1階受付の佐々木です。今、葉山さんに面会を希望されてる方がロビーにいらっしゃいます》


「どなたですか?」


あたしにアポなしで面会希望なんて、初めてのことだ。


《橘友里様と言う方ですが……》


その名前に聞き覚えはない。

だけど、取引先の会社の誰かかもしれない。


「分かりました。すぐ行きます」


そのまま静かに受話器を置き、1階ロビーへ向かった。


「お待たせしました。私が社長秘書の葉山光姫ですが……」


振り向いた彼女にあたしは驚いた。


「あ、あなたは……」


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