旦那様は社長
会社のエントランス前に社長専用車が止まり、あたしは毎朝そこで社長を出迎える。
1日の仕事の始まりの合図でもあった。
専用車を下りる社長に続き1階受付を通り過ぎると、社長専用エレベーターに乗り込む。
ここから35階の社長室まで、狭い密室の中に2人きり。
今まではただの社長と秘書の関係だったから、この数分の沈黙は当たり前のことだった。
それが今では……
「おい、お前……今日の朝飯、アレは何だ」
「……和食料理ですが」
「お前は好きに食えばいい。だが、オレの朝飯に納豆なんて異質なモノを出すな!」
「社長、ここは会社です。プライベートを持ち込まないで下さい」
毎朝のように、あたしが用意する朝ご飯について、何かしら文句を言う時間に変わってしまった。