*王子さまの甘い誘惑*
「え、天宮さん
どうしたの」
茶髪のひとに
支えられたままのあたしを
驚いたようにみる
桜井陸。
「桜井くんっ…
あの…」
会えたのは
いいけど
この状況はやばい
かもしれない。
「あー、天宮さんか。
転校生だよね?
かーわいー」
ちょっと軽い感じの
茶髪の彼は、
あたしを離して
そう言った。
明るいなー
この人。
…なんて
思ってる場合じゃ
ないっ!
「天宮、何ちゃん?」
「結衣です。
あの、
結ぶっていう字に
ころもの字、です」
「へー。あ、
俺は安堂直(アンドウ・ナオ)。
よろしくなー」
「はぁ…どうも」
うつむき加減で
答えるあたし。
だって、彼が
じろじろみてくるんだもん。
「天宮さん、もしかして
俺に何か用事があって
ここに来た?」
「あ!」
桜井陸の言葉に
はっと我に返って
ポケットから
シルバーネックレスを
取り出す。
その瞬間、
周りの女子が
ざわめき始めた。
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