†Orion†〜Nao's Story〜


森谷は……

昨日のことなんか、まるで“なかったこと”にしているかのようだ。

愛用のiPodで音楽を聴き。

あたしと亜里沙の会話を盗み聞きしては、いつものように嫌味を口にする。


普段どおりに接してくる森谷。

あたしの視線は、自然と森谷の唇へといってしまう。



……すべての元凶は、あのキスなんだ。

自分のフラフラした気持ちを棚に上げて、森谷だけを一方的に責めてしまう。



教室を出たあたしが向かったのは、三年生の教室。

昨日のことをちゃんと話したくて、先輩のクラスへと向かう。


ちゃんと話すといっても、何から話せばいいのか分からない。

だけど、このままじゃいけないことは確かだ。



「あ、奈緒ちゃーん」


「………辻さん」



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