†Orion†〜Nao's Story〜
程なくして、呼ばれた先輩が姿を現した。
「……奈緒ちゃん」
突然やって来たあたしに、先輩はひどく驚いていた。
そして、隣にいた辻さんを見て、ほんの少し気まずそうな顔をする。
「用があるんだって、おまえに」
辻さんはもうすでに喧嘩腰だ。
突き刺すような冷たい視線で、自分より少し背の低い先輩を見下ろしている。
「あ……っ、辻さん、一緒に来てくれてありがとうございました」
異様な空気が辛くなって、あたしは無理に笑顔を取り繕いながら辻さんにお礼を言った。
辻さんはようやく笑顔を見せて……というよりも、あたしと同じように無理して笑いながら、「じゃあね」と言って、その場を立ち去った。