月から堕ちたアリス
そこには紫とピンクが入り交じった毛を持つ子猫がいた。



猫なのに何故か笑っているように見える。



『今喋ったのって、あんた??』

「そうだよ。」



何かもうちょっとやそっとじゃ驚かなくなった自分にビックリ。


っていうかそれ以前にこれ夢だし。

何でも有りか。



「君は記憶を探してるんでしょ??それが君の探している記憶の実物大。」

『これが、あたしの記憶…。』



あたしはそれに触れようと手を伸ばしかけた。



「あーダメダメ。それはただの幻だから。本物があるのは現実だよ。」

『どこにあるの??』

「そこまでは言わない。」

『はぁ?!何でっ??!!』

「気分だよ気分。」



…何て気紛れな猫だ。



『知ってるなら教えてくれたって良くない?!』

「…分かったよーじゃあヒント。君の思うままに旅をすると良い。きっと見つかるよ。記憶は4つの国にそれぞれ1つずつある。」

『…何でそんなに知ってるの??』

「さぁね。それはこの世界が不条理と非現実の世界だからじゃないの??この世界に論理性を求める方が無駄だよ。だって君、月から堕ちて無傷でしょ??普通に考えたらただじゃ済まないよ??」

『………まぁ、確かに。』



さすが夢。

理由がめちゃくちゃ過ぎる。



「じゃあね、僕はもう行くよ。」

『あ、待って!!!!』

「何か用??」

『…あんたの名前は??』

























「僕はチェシャ猫。またね、アリス。」



チェシャ猫はそう言うと笑った顔のままスゥッと消えていった。



『…また会うのかな…。』



あたしはプリズムに手を触れ、目を閉じる。


すると、プリズムの光は一層輝きを増した。





その白い光に包まれると、夢にも関わらずあたしは心地良さを感じた。
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