恋・したい
「野上先生、ちょっと」

職員室に入った途端、教頭に呼び止められた。今度はなんだろう。

「野上先生のクラスに明日転入生が来るのでよろしくお願いしますよ」
『はい、その生徒の名前を教えてください』
「佐倉柚季です。頼みますよ」

それだけ言って教頭は職員室を出て行った。
さくらゆずき…
ふとゆずきの顔が浮かぶ。
この世に同名の人はたくさんいるんだもの。それにゆずきの名字知らないし、ましてやゆずきは女の子なんだし。
明日から共学なんて事…、まさかね。

「野上先生大変でしょう。今夜焼き鳥なんていかがですか?」
『お気持ちだけ受け取っておきます』

三浦先生が悲しそうに私を見ている。他の教師は笑いを堪えていたり、私をじっと見ていたり。
気分が悪くなったので早足で学校を出た。
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