准教授 高野先生の恋人
彼が、えいやっと起き上がり、明かりを落とす準備をはじめる。
「さあて、山羊も羊も寝る時間だよ」
「はーい」
私はよい子のよいお返事をして、おとなしく素早くベッドにもぐりこんだ。
「寛行さん」
「うん?」
「今日は、ホントにありがと」
そう言って……まるで言い逃げ?するように私は彼に背中をむけて毛布を被った。
毛布の中じゃ見えないけれど、上からひょいと覗き込む彼の優しい気配がわかった。
そして――
「こちらこそ。君の大切な日を一緒にすごさせてくれて有難う」
その声だけでもう、彼がどんなに私を愛おしく見つめているのか想像できた。
生まれて初めて、家族以外の人……恋人と一緒にすごした誕生日。
自分をこの世に迎えてくれた両親に、私は心の中であらためて感謝したのだった。