准教授 高野先生の恋人

可愛そうに……いきなり来た客人にもみくちゃにされてしまったフランソワ。

「もう!リボンほどけちゃったでしょ!」

「あははー、ごめーん」

フランソワのリボンは、きれいな若草色のふわふわリボン。

ホワイトデーのとき寛行さんがプレゼントしてくれた大事なリボン。

もちろん約束どおり、ぐりとぐらのカステラもちゃんと作ってくれた。

だけど、カステラは食べたらなくなっちゃうから何か残るものを一つでも、って。

私はキュッとリボンを結び直したフランソワを横抱きしてベッドの上に腰をおろした。

「あーあ、カスガイ改めタケイかぁ」

「まーねー。つーか、“あーあ”はないんでないのぉ?スズキってばさぁ」

「おっとっと、これは失礼しました」

カスガイに非礼を詫びる私の口調は、何故か寛行さんの口調にそっくりだった。


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