准教授 高野先生の恋人

「詩織ちゃん、お腹すいたよね?」

「あ、そういえば・・・ぺこぺこだった」

「どうする?作るの面倒だし、外出る?」

「うんん。カップめんの買い置きあるよ」

「そんなんでいいの?」

「うん、ぜんぜんいい。ほら、ええと、あの人が言ってるじゃないですか」

「あの人?」

「ええと・・・そう、沢庵和尚ですよ」

「待って待って待たされて食べる大根の漬物は旨いって話?・・・ん?それって・・・」

「何つまんないこと考えてんですか・・・そういう自嘲や自虐は禁物ですよ。

私は、待って待って待たされたから“とってもよかった”わけじゃないですからね。

いつも、美味しかったなって、お腹いっぱいになったなって思ってるんですから。

まったく・・・へんに勘ぐらないでくださいよ、寛行さんはぜんぜん考えすぎです」

「ごめんごめん、言ってみただけ」

「もう、とっととお湯沸かして下さい」

「はいはい」
< 30 / 324 >

この作品をシェア

pagetop