恐怖 DUSTER
・・・恵子は入れ替わり新しい人生を送る事になんの疑問も感じていないんだ・・・


弥生は、前に恵子が言っていた、お菊の心を食べてしまったという言葉を思い出していた。


・・・恵子は、心だけでなく入れ替わった人の人生も食べてしまうんだ・・・


弥生の中で、恵子に対する複雑な思いが駆け巡っていく。


「・・・ねぇ?・・・恵子は今まで大勢の人達と入れ替わって幸せだったの・・・?」


恵子は再び、きょとんとした表情で弥生に答えた。


「もちろん幸せだったわよ。中には不幸な環境の子とも入れ替わったりした事もあったけど、そういう場合は早めに次に入れ替わる子を探し出していたから、不幸だと感じる事は少なかったわ」


「そ、そういうことじゃなくて。恵子は恵子としての人生をまっとうしたいとは思わなかったの?」


恵子は、弥生の質問が理解できないのか、不思議そうな表情で弥生を見つめている。



「どうして入れ替われるのに、一人の子の人生をまっとうしなければならないの?」



「だって・・・恵子、言ったよね?子供も生んだって・・・」



「うん、今までに何十人と自分の子を産んだわよ」



「その子らの成長を、母として見届けたいとは思わなかったの・・・?」



恵子は弥生の問いかけに、初めて思い悩む様子を見せる。



「恵子は、その子らを愛してなかったの?」



「もちろん愛していたわ!・・・特に最初のお菊ちゃんの・・・最初の私の子のことは今でも忘れられない・・・」


「だったら何故、一緒に生きていこうとしなかったの?」


弥生の言葉が恵子の胸に突き刺さっていく。恵子は心の奥に封印していた多くの我が子達との別れを思い出していた。


「・・・大丈夫なのよ・・・私と別れても悲しむ子は一人もいないから・・・」



「悲しむ子が一人もいないなんてわけ無いじゃない!」



恵子の言葉に憤慨し、今度は弥生が大きな声を上げて叫んだ!
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