恐怖 DUSTER
徐々に心を取り戻したという麻美の言葉に驚く弥生。

・・・恐怖の感情でとりもどした・・・?


その時、弥生の中で思い当たる記憶が蘇ってくる。

自分も、新しい弥生に対して目隠しと言葉で恐怖を与えたという事を。


麻美は、弥生の感情を読み取り微笑みながら言った。


「いま弥生が想像しているとおり、弥生がした事と同じ事を私もしたの」


「でもね、それが自分の心を取り戻す事だと最初は思わなかったわ?」


「ただ、新しい私が許せなくて脅かすつもりで始めたの」


弥生は、新しい心の弥生が自分によって受けた恐怖の記憶を読み取っていたから、その時の新しい麻美もさぞ恐ろしかっただろうと思った・・・

「新しい麻美は、すごく怖がったでしょうね」


「それは、もう凄い恐怖を感じていたわ」


「私は毎晩、今日の弥生のように恐怖を与え続けたから」


弥生の中で、新しい麻美に対して同情の思いが生まれる。

話をする麻美の表情は、まるで復讐に燃える者のようだ。

話し声も強い口調になって言っている・・・


「新しい私に恐怖を感じさせていたらね、ある事に気がついたの?」

「ある事・・・?」

「それはね?新しい私が恐怖の感情を持つたびに、真っ暗な場所にいるはずの自分が徐々に解放されていく事にね」


今の麻美の言葉は理解できる、なぜならば先ほどまで自分自身も新しい弥生に恐怖を与えていたら自分の存在が自由になるような感覚になっていったから・・・


・・・だけど自分は、新しい私に恐怖を与えている自覚は無かったのだが・・・


・・・最初は誰かの声が聞こえてきて、その声のする方に向かったら光が見えてきて・・・そして、弥生ちゃん達の楽しそうな声が聞こえてきた・・・


・・・私は、怖がらせるつもりは無かった・・・


・・・ただ、仲間に入りたかっただけ・・・


・・・弥生ちゃんたちに、私の存在を気づいてもらいたかっただけなの・・・

「ゃょい!」

「ゃよい!」

「弥生ってば!」


麻美の強い声で我に返る弥生。

「弥生!あなた今、前の弥生に対して同情の思いを持っていない?」


弥生は麻美の的確な指摘にドキリとした。
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