ホスト前線上昇中
「久しぶりだね!渉!!」
後ろからポンと肩をたたかれて振り向くと、

「珠希!!」
彼女の笑顔に触れることが懐かしく思える。

「やっぱクラスが違うと同じ学校でもなかなか会えないよね~どう?決めた?」

「なっなっ何を?」

「嫌だな~そんな驚くことないでしょ。部活よ、部活」

あっ……そっか。

「まだ迷っているんだけど陸上部にしようかなって。珠希は?」

「演劇部。これから入部届け出してくるとこ。じゃあね」

確か……彼女の将来の夢は舞台女優だっけ。
いいな~夢があるって。

「うん。舞台見に行くから」

彼女は『ありがとう』と言う代わりに手を振ってくれた。

私も陸上……頑張ってみようかなぁ。
珠希に刺激されてそんな気になっていた。

我ながら結構、『単純』なのかもしれない。





「よろしくお願いします」

「一年A組の杉原渉さんと柳谷深雪さんね」

私たち二人は『陸上部』の部室の門を敲くことに決めたのだった。
今、目の前にいるのは三年の女子陸上部のキャプテン、椎名千佳(しいなちか)先輩。
椎名……どこかで聞いたことが……。

「もしかして一年に妹さんがいるとか?」

「杉原さん、よく知ってるわね。クラス違うのに」

やっぱり……。
世間って案外、狭いんだなぁ。

「はぁ……ちょっといろいろ複雑なことに巻き込まれまして」

流石にこれ以上は言えない。

「村瀬君?」

「まぁ……そのなんて言うか」
こんな時なんて言ったらいいのか分からないよ~っ!
素直に『そうです』と言えばアノ話になるだろうし。
(今は美由紀の話をこれ以上したくない)

「それにしても――もったいないわよね、彼。陸上辞めちゃうなんて」

えっ?!

陸上を辞めた……?
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