ホスト前線上昇中
『シンデレラ』

喫茶店の看板がそう教えてくれた。
暗くなると電気が点灯するのだろう。しかしまだ明るい今は、コンセントが無造作に地面に置かれている。


カラーン……。


店のドアは自動ではなく、手で手前に引いて開けるタイプ。
ドアのてっぺんに取り付けられたベルが上品な音を奏でる。

「いらっしゃいませ」

一番最初に出迎えてくれたのは、二十歳くらいの女性だった。

「何名様ですか？」

「二名です」

「こちらへどうぞ」

何気ない会話を交わし通された席は、壁際の二名テーブルだった。
店内にはジャズが流れ、お客さんもまばらにいる。
本を読んでる人、音楽を聞いている人、勉強している人、寝ている人、会話を楽しんでいる人……。
実に様々な人が個々に自分の方法でくつろいでいる。

「注文が決まりましたら御呼び下さい」

そう言って彼女はお水とおしぼりをテーブルに並べると去って行った。

「何にしようか」

「私はアイスカフェオレ」

「よかった。俺たち気が合いそうだ」

彼はにこっと笑って、店員さんに声をかけアイスカフェオレを二つ頼んでいた。
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