トリプレ
「あ~あ。お兄ちゃんを泣かせちゃった。お兄ちゃんは、学校では笑っているんだね。由衣の前ではいつも泣きそうな顔をする。お兄ちゃんはいつも由衣を守ってくれたんだよ。きっと…死にたかったハズなのに。」
『え?』
由衣ちゃんは続ける。
「物心ついた頃から父親は母親に対して暴力を振るっていた。それはもう、ほとんど毎日。由衣とお兄ちゃんは押入れに隠れて、あの男の気が晴れるのを待つしかなかった。ある日、母親は由衣達を置いて出て行った。もう帰って来なかった。それからの標的はお兄ちゃんになった。ライターを持てば焼き殺すぞ、水を見れば沈めるぞ、あの男は毎日そんな事を言ってたよ。由衣がこんな体だから、お兄ちゃんはいつも由衣を庇ってくれていた。何年か前にあの男は覚せい剤で捕まって、由衣達は叔父さんの家で暮らせるようになった。でも由衣はすぐに入院になって、叔父さんの家にはほとんど行った事ないけど…。叔父さんはすごく優しいよ。叔母さんも、イトコも。でもきっと、お兄ちゃんは辛いんだろうなぁ。肩身狭いんだろうなぁ。由衣には、なんも愚痴ってくれないから心配なの。」
紘貴の過去。ずっと、わけわかんない奴だと思っていた真実がようやく明かされた。
私…紘貴にいっぱい無神経な事を言っちゃった。
紘貴のお父さんの方が絶対良い、とか紘貴の妹なら明るく元気なクラスのムードメーカーだ、とか。
なんてバカなんだ。みんながみんな親がいて当たり前、健康で当たり前って思ってた。紘貴といた時間はいっぱいあるのに、どうして気が付かなかったんだ。なのに私が紘貴に救われた。孤独を和らいでくれた。でも自分は紘貴にとってあまりにも無力。あまりにも非力。
『え?』
由衣ちゃんは続ける。
「物心ついた頃から父親は母親に対して暴力を振るっていた。それはもう、ほとんど毎日。由衣とお兄ちゃんは押入れに隠れて、あの男の気が晴れるのを待つしかなかった。ある日、母親は由衣達を置いて出て行った。もう帰って来なかった。それからの標的はお兄ちゃんになった。ライターを持てば焼き殺すぞ、水を見れば沈めるぞ、あの男は毎日そんな事を言ってたよ。由衣がこんな体だから、お兄ちゃんはいつも由衣を庇ってくれていた。何年か前にあの男は覚せい剤で捕まって、由衣達は叔父さんの家で暮らせるようになった。でも由衣はすぐに入院になって、叔父さんの家にはほとんど行った事ないけど…。叔父さんはすごく優しいよ。叔母さんも、イトコも。でもきっと、お兄ちゃんは辛いんだろうなぁ。肩身狭いんだろうなぁ。由衣には、なんも愚痴ってくれないから心配なの。」
紘貴の過去。ずっと、わけわかんない奴だと思っていた真実がようやく明かされた。
私…紘貴にいっぱい無神経な事を言っちゃった。
紘貴のお父さんの方が絶対良い、とか紘貴の妹なら明るく元気なクラスのムードメーカーだ、とか。
なんてバカなんだ。みんながみんな親がいて当たり前、健康で当たり前って思ってた。紘貴といた時間はいっぱいあるのに、どうして気が付かなかったんだ。なのに私が紘貴に救われた。孤独を和らいでくれた。でも自分は紘貴にとってあまりにも無力。あまりにも非力。