トリプレ
「お兄ちゃんの席はどこ?」
 由衣ちゃんは真っ先に聞いた。紘貴が自分の席を指さすと由衣ちゃんはそこに座った。
「一番後ろなんだね。みんなの背中が見えるね。」
 そんな事考えた事もなかった。先生から一番遠くてラッキーとしか思っていなかった。そうか、由衣ちゃんはこの席をそんな風に感じるのか。
「その隣が私の席だよ。」
 私もその隣に座った。
「わぁ、いいなぁ。ねぇみんなも座って。」
 由衣ちゃんは喜んでいた。明日香が私の前の席に、琉璃が由衣ちゃんの前の席に座った。紘貴は立ったまま。
「学校って感じ。ここでお兄ちゃんは勉強したり、友達と遊んだりしてるんだね。」
 そうか。由衣ちゃんは学校での紘貴を知らないんだ。ずっと入院していて学校に通えないでいるから、羨ましいんだな。
 ふと紘貴を見ると、泣いていた。胸が痛くなった。
 すぐに紘貴は何も言わず教室から出て行った。涙を堪えきれなくなって、止まらなくなったのかもしれない。
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