雷鳴の夜
言語化する事すら難解な、不明瞭な咆哮を上げ、人造人間…ヴィクター10型は追って来る。

恐らくはこの地下の世界で、絶対の暴君として君臨してきた存在。

人間にも、同じ人造人間同士の中でも彼を止められる者は存在せず、地下病棟の限られたヒエラルギーの中では頂点に立っていたのだろう。

思い通りにならないものなど存在しない。

そんな暴君が、今新たなる獲物を発見したのだ。

ねじ伏せたい。

屈服させたい。

服従させたい。

殺したい…!

理性などとうに失ってしまった彼が、何に依って動くのか。

これはもう、本能以外の何物でもなかった。

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