ぼくの 妹 姫




「蕾は」



「え?」



「蕾は ぼくが憎くない?」



「……どうして?」



それ以上、何も言わないぼくを



蕾は真顔で見つめてた






「お兄ちゃんは何も悪くないよ」





償う事すら許されないと



稲垣刑事は言ってた



だけど




償う存在も 許してくれる存在も




ぼくの腕の中にいる




「お願いがあるんだ、蕾」



ぼくの言葉に
視線だけで『なに?』と蕾は訊いた





「キスしてもいい?」





蕾は一度、目を大きく見開き




「………いいよ」と答えた





蕾の頬に手を添えると



蕾は目を伏せ



ゆっくり唇を近づけて



目を閉じた妹に
ぼくはキスをした




軽く触れるだけのキス



唇を離し蕾の頬を撫でると



「……ねぇ、お兄ちゃん」


蕾が ぼくに 訊いた


「蕾が一緒に死んで欲しいって言ったらどうする?」



ぼくは迷わず答えた



「蕾を殺して、ぼくも死ぬ」




蕾は微笑み


ゆっくり目を閉じて


そのまま眠った



ぼくは いつまでも
蕾の頬や髪を撫でていた




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