ぼくの 妹 姫
わかるんだ。
誰かを求める蕾の気持ちが
ぼくだって、両親を消し去り
蕾と離れて暮らした頃
今の蕾と同じ気持ちで
従姉妹の美紗を抱いたんだ
この場合のセックスは
愛だの恋だのとは全然違う
一瞬でも誰かと繋がっていないと自分が保てない
すごく切実な
生きる上ですごく切実な行為だ
ぼくの腕の中で泣きじゃくる蕾に、いきなり怒ったことを謝ろうとした時
「………ごめんなさい……」
蕾が弱々しい声を出した
「………蕾?」
「……ごめんなさい
ごめんなさい
ごめんなさい
違うの……違うの
ごめんなさい
ごめんなさい
私………………」
ぼくの腕の中から
蕾は涙で濡れた顔を上げ
すがるように ぼくを見つめた
「……私にはお兄ちゃんしか
いないのに……
お兄ちゃんに嫌われたら私……」
…………ああ……
胸が押し潰されるように
痛かった
ぼく達はこの世に二人きりだ
世界には
たくさんの人間がいるけど
ぼくと蕾は
いつだって二人きりだ
暗い暗い月明かりすら届かない
出口も果てもない暗闇で
ぼく達はいつだって二人きりだ
「バカなことを………
蕾、バカなことを言うな。
ぼくが蕾を嫌うなんて
あり得ないよ………」