ぼくの 妹 姫



ギュッとぼくに抱き着き



「何歳頃だろ?
4歳とかかな?

蕾ね、お父さんがお母さんを
いじめてると思った」


「いじめてる?」


ぼくの肩に顔を埋め
蕾はコクコクうなずいた



「お母さんの上に
お父さんが乗って

お父さんの唸るような声は
怖かったし

お母さんの声は
泣き声に聞こえたんだよね

泣き声に似てない?
女の人のそういう時の声って」



「うん……
まあ、そうかな?」


何も知らない子供が聞けば
苦しんでるようにも
聞こえるかもな……


「蕾ね、意地悪なお母さんを
お父さんがいじめてくれてると思ってた。バカみたいでしょう?」



蕾は ふふって笑いながら


「全然、違うのにね」
って呟いた



髪を撫でて
ぼくの肩から
顔を上げた蕾にキスをして



「ぼくも今、蕾をいじめてる?」



「ううん。お兄ちゃんと蕾は」


一度 言葉を切り
蕾は考えるように
天井を見上げてから


「お兄ちゃんと蕾は遊んでるの」


「遊んでる?」


笑いながら蕾はうなずき


「だって楽しいでしょう?」


………遊んでるねぇ
まるで、
おままごとしてるみたいに
言うなぁ



ぼくは 身体が離れないように
蕾をシーツの上に倒し



前髪をかき上げるように
撫でながら



「ぼくは蕾を愛してるよ
たくさん愛して可愛がってる」



ゆっくり身体を動かし始めたぼくの目を蕾はじっと見つめ



「蕾は遊んでるんだもん」
と言ってから顔を背けた





< 128 / 184 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop