ぼくの 妹 姫
「ごめんねー
急に来ちゃって」
美紗さんは玄関で
高いヒールのサンダルを脱ぎ
居間に入ると
ソファーの横に
ボストンバックを置き
ぐるりと部屋を見渡した
「古いけど……
一軒家なんだね」
「どうぞ
掛けてください
今、お茶お持ちします」
美紗さんに
ソファーに座るよう
うながして
キッチンに立つ
手早く買ってきた物を
冷蔵庫にしまってると
「蕾ちゃんが
家事してるのぉ?」
座るように言ったのに
美紗さんは
勝手にキッチンに入り
私の背後から
冷蔵庫をのぞいてる
「いつもって訳じゃ
……ないですけど」
従姉妹って言っても
美紗さんとは
全然 会ったことがない
母方の親戚だけあって
美紗さんは どことなく
お母さんに似てる気がする
いきなり近寄らないでほしい
私が不快に思ってるのにも
気がつかないで
食材を冷蔵庫にしまう様を
まじまじと見て
「まだ中学生なのに……
なんで わざわざ
楓のところに来たの?
蕾ちゃんって
中西の方が引き取ってたよね?
向こうの方が
楓のところより
良かったんじゃない?」