ぼくの 妹 姫
重たい沈黙が流れ
美紗は髪を耳にかけながら
「楓に黙ってたけど
実は私、春に仕事
クビになって」
「…………え?」
「不景気だもんね
仕方ない…………
へへ、ニートってヤツ」
美紗は目に涙をいっぱい溜め
震える声で言った
「就活、うまく行かなくてさ
なんか落とされる度
ダメ人間って
言われてるみたいで……」
「美紗………」
美紗は ぐしゃぐしゃに
顔を歪ませて泣き出した
「………つらくって……
堪えられなくなって……
楓に……楓に会いたくな……」
泣きじゃくる美紗を抱きしめ
髪を撫でた
……知らなかった
春に一度
夜中に電話してきたけど
何も言わなかったし……
「どっかホテル予約した?」
そう訊くと
美紗は首を横に振った
肩を震わせ
ぼくに しがみ着く
美紗はかわいそうだけど
…………蕾
ぼくの心の中は
蕾のことでいっぱいだった
「じゃあ今夜は
ゆっくり泊まっていきな」
美紗の背中を優しく擦り
そうは言ったけど
たった一晩でも
この女、邪魔だな………
かつては身体を1つにし
確かにぼくの救いだった美紗が
たまらなく邪魔だった