ぼくの 妹 姫





身体の奥から
沸騰するように
苦しい想いが湧き上がる




湧き上がるけど
想いをぶつける場所がない




目の前の女にぶつけるとしたら
間違いない
ぼくは この女を殺すだろう





蕾に会いたい




蕾だけだ
ぼくに穏やかさを
与えてくれるのは
蕾だけだ―――――――――






「………蕾に会いたい」




その一言が口から漏れると
同時に瞳から熱い涙も溢れた




「蕾、蕾に会いたい
蕾に会いたい
蕾に会いたい……」




泣き崩れたぼくを
美紗は抱えるように
抱きしめ




「私、ずっと一緒にいるから
楓のそばにいて
楓を守るから………」




「蕾、蕾……蕾に会いたいよ」






蕾を呼んで泣くぼくを
ずっと美紗は抱いていた








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