ぼくの 妹 姫




無気力で
家の中も荒れ放題だった



だらしなく
ソファーの背もたれに
寄りかかり
焦点の定まらない
視線を向けると



ボストンバッグ片手に
美紗は明るい声で




「ダメじゃない、楓
空気の入れ替えくらいしなきゃ
病気になるよ」




カラカラと
窓が開く音がして
冷たい外気が入ってきた




「………余計なことするな」



ぼくの足元に美紗は座り



「余計なことするよ
だって私、楓が心配だもん」




足元で ぼくを じっと見上げる
傍らにはボストンバッグ




そう、あの日も
美紗はこのバッグを持って
ここに来て




ぼくと蕾の生活を
壊していった…………





「…………てめえのせいだ」



のどの奥から出た言葉は
獰猛な獣のように低い




「てめえが
余計なことしやがって
全部、全部、全部
てめえのせいだっ!」




憎しみを全てこめて
美紗の瞳をにらむと



美紗は怯えることもなく
ぼくの瞳を見つめ返し




「そうだよ
全部、私のせいだよ

だって私、楓を愛してるもの
間違ったことしてるなら
やめさせるよ」






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