ぼくの 妹 姫




美紗さんは職を失い
逃げ出すように
お兄ちゃんを頼りに来たんだ



都合よく
昔の男を逃げ道に
ここへ来て



邪魔な私を
追い出したいんだろう



だけど
妹と近親相姦する男なんて
気持ち悪くなったのかな




美紗さんを残し
部屋に戻ろうと
足を一歩動かした時



「間違ってるよ」





急に力強い声で
美紗さんは言った




「楓と蕾ちゃんに
何があったか知らないけど
こんなの間違ってる」




私を射抜くような視線に
一瞬 呼吸が止まった




そして 私は彼女に訊いた






「あなたはお兄ちゃんを
愛してますか?」





「愛してる
だから、悪いことしてるなら
なにがなんでも
やめさせる」




私は そのまま部屋に戻って
眠るお兄ちゃんの頬を
ずっと、ずっと撫でた




だんだん部屋が青く
明るくなっていき
白い光がカーテン越しに
感じて





……お兄ちゃんは蕾の太陽





ずっと暗闇の中に
閉じこもっていたいけど




………お兄ちゃん
蕾ね、待ってた気がする


ずっと閉じこもっていたい
一方で
待ってた気がする


お兄ちゃんを
ここから引き上げてくれる人





「愛してるって………
蕾も言ってみたいけど
今のままじゃ………
言えないもんね」






こうして
私は兄の元を去ったのだ






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