ぼくの 妹 姫
ドクン、ドクン、ドクン
声が震えないように
腹に力を入れて喋った
「わかりませんよ。
ぼくは、そこまで………」
稲垣刑事は「そぉか?」と呟き
「楓くん。
オレはな、わかるんだよ」
「…………何が?」
「悪い事した人間は目ぇ見れば
わかるんだよ」
ドックン
鼓動が一度 耳の奥に
大きく響いた
「蕾ちゃんの暴行事件
ご両親は『蕾の将来に傷がつく』
そう言って被害届を出さなかった
この手の事件には、よくある話だ
―――――――――でも
蕾ちゃんの入院中、母親が一度しか見舞いに来ていない
気にしてたところに
キミたちの家が燃え
両親が死亡した」
稲垣刑事は
「なぁ、楓くん」
全て わかってる
「不幸が重なる事って意外とよくあるんだ
だけど
火災の後、会った楓くん
キミの目ぇな
真っ暗だったよ
哀しみの暗闇じゃない
もっと別の――――――」
稲垣刑事は遠くを見るような目をして
「オレの言いたい事、わかるよな?」