ぼくの 妹 姫



赤く赤く燃える炎



全てを焼き尽くす炎



――もっと もっと 激しく
全てを焼き尽くして欲しい



16歳だった ぼくは
6歳の蕾の手を握りしめ



家を覆う赤い炎に



もっと もっと もっと もっと



ぼくと蕾の哀しみを
焼き尽くして欲しいと祈った




ぼくたちを傷つけた全てを
灰にして


吹き荒れる風に乗せ
儚く遠く
誰の目にも届かない場所へ
飛ばして欲しい



哀しみが消えますようにと
小さな手を握りしめ祈った





「わかりませんよ」


ぼくは笑いながら答えた



「わかりませんよ、稲垣刑事
あなたが何を言いたいのか
わかりません」



「楓くん…キミな……」



口を開いた稲垣刑事を
にらみつけると



稲垣刑事は言いかけた言葉を引っ込め
コーヒーを一口飲んだ



認めるわけに行かないんだ



蕾のために



あの子を守れるのは


ぼくしか いないのだから




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