結び目~環のリボン~
「そんな心配は、無用だ。」


先生は、アスファルトの熱さなど微塵も感じていないようだ。素早く立ち上がり大きく胸を反らす。



「練習時間は、そう長くない。それにアイツを呼んだ。受験勉強みてもらえ!」



「はぁ・・・」


(先生が教えてくれるんじゃないんだ。それに・・・誰だろ?アイツって?)



先生は、ニコニコしながら両手を口元にもっていった。



「鳴海(ナルミ)~!ちょっといいかぁ~!」



(ま、まさか!)



その名字を耳にするだけで、心臓がギュンと縮む思いだ。



後ろから軽快な足音が聞こえてくるが振り向けるはずもなかった。


(マズイ。)



「さっきからずっと見てたぜ。少しは、先生に協力してあげてよ。たまちゃん。」



そう言って先生の隣で笑っているのは、鳴海開(ナルミカイ)。



背がまた伸びたようだ。日焼けした肌に走っても乱れないサラサラの髪の持ち主が、大きな目でわたしを見つめた。



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