海に花、空に指先、地に霞
わがまま姫


翌日も、その翌日も。
私はできるだけ部屋にこもっていた。

彼らも、必要以上に私にかまうことなく、それぞれの時間を持っていたようだ。時々出かけたりしているみたいだし。

なんとなく、身動きが取れないようで…気詰まりな部分もあったけれど。

階下から響く、人の声が、物音が。
正直…とてもくすぐったく、とてもうれしかった。

内緒だけど。

食事の時は、階下から声がかかるから、それに合わせて降りていく。

驚いたことに、家事…とくに食事の準備をしてくれるのは大体、凪世。
主婦みたいに、手際よく。大体いつも笑顔を絶やさない。

森さんは仏間で、精神統一みたいなのを、よくしている。刀の手入れとか。武士みたいだ。
1日に1回は、仏壇に手を合わせに行くから、森さんとは話すことが増えた。
声をかければ、あの変わった口調で、静かに話し返してくれる。

天鳥は、基本DVDを観ているみたい。アクションやらコメディーやらのDVDがリビングに散らばっている。リビングから、笑い声も響いてくる。
…映画好きなのか?

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