半音下がりの靴音


くすぐったい・・・
鼻の頭を葉がくすぐる感覚で、キリクは目が覚めた。


すぐに赤面する。


「ちょっ、なんで俺、お前の膝枕で寝てるんだよ!?」


「なーんででしょーう」


不敵な笑みのアイレット。
少し幸せそうにも見える。


「どうしたの?顔赤いよ?」

「うっせぇ!!」


顔をいっそう赤らめて、
キリクは応戦する。

十五歳と思えない幼い反応に、アイレットは優しく微笑む。


「三時間、ぐっすり」






・・・・・・ぽつ

ぽつぽつぽつ。





「雨・・・」


「うわぁ、俺が寝てる間に雨雲が育ってたのかっ!」


「なんか空が暗いなぁ、って思ってたんだけど・・・」


「うん。それ、雨雲ね。気付いてたんなら起こせよ」


「・・・・・・」


「ん?どうかした?」


「別に、何でもない」




また起こらしちまった・・・
キリクは反省するジェスチャーをして、機嫌をうかがう。

アイレットは不機嫌な様子だ。


この浜に、
雨宿りできる場所は無い。



「・・・ま、いいけどさっ。このままだと、私たち、風邪、ひいちゃうよ?」


「このままでいい」


「は?」


「それに、今日の雨はなんだか気持ちいい」


「・・・キリク、あんたさ、意味不明なんだけど。それに若干口調変わってるあたり、キモ」

「な!?お前俺にどんだけキモって言ったら気が済むんだよ」

「さぁ?・・・・・・クシュ」

「あ」




風が吹く、
雨が横殴りに降る。


二人は、しばし沈黙して





「・・・帰りますか」


「そだね」
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