半音下がりの靴音
1・始まる音
光・・・・
今僕を照らしている、
それが光なの?
教えて。
このコインをあげるから・・・
「・・なにそれ、幻聴?キモ」
「あ、人が真剣に悩んで相談してんのにそんなこと言うわけ?信じらんないっ!最近ずっと聞こえてるのに・・・ううん!話しかけられてるの!」
「っせぇよ。キモ・・・」
面倒くさそうにつぶやいて、
キリクは目を閉る。
「女の子の相談に真剣に乗ってくれない男はサイテーよ!」
キリクにとっては
この上ない騒音なのだが、
その全てを浜風が攫ってゆく。
「なぁ、アイレット。知ってる?ここを吹く風の音はさ、この街で一番綺麗なんだぜ?」
「・・・知ってるわよ。私が怒る度に言うもの」
「・・・だったな」
「ねぇ、その『一番綺麗な音』よりも綺麗な音・・・探したいと思ったこと、無いの?」
「俺はここが好きだからな。死ぬのもここって決めてる」
「そう」
「俺がここにいて、お前がそこにいて、風が吹いて、音を奏でて・・・・・・何十年か先、その中で死にたいんだよな」
「ちょ、イタいよ?キモ」