半音下がりの靴音
1・始まる音

光・・・・
今僕を照らしている、
それが光なの?

教えて。
このコインをあげるから・・・






「・・なにそれ、幻聴?キモ」


「あ、人が真剣に悩んで相談してんのにそんなこと言うわけ?信じらんないっ!最近ずっと聞こえてるのに・・・ううん!話しかけられてるの!」


「っせぇよ。キモ・・・」


面倒くさそうにつぶやいて、
キリクは目を閉る。


「女の子の相談に真剣に乗ってくれない男はサイテーよ!」


キリクにとっては
この上ない騒音なのだが、
その全てを浜風が攫ってゆく。

「なぁ、アイレット。知ってる?ここを吹く風の音はさ、この街で一番綺麗なんだぜ?」


「・・・知ってるわよ。私が怒る度に言うもの」


「・・・だったな」


「ねぇ、その『一番綺麗な音』よりも綺麗な音・・・探したいと思ったこと、無いの?」


「俺はここが好きだからな。死ぬのもここって決めてる」


「そう」


「俺がここにいて、お前がそこにいて、風が吹いて、音を奏でて・・・・・・何十年か先、その中で死にたいんだよな」


「ちょ、イタいよ?キモ」
< 1 / 2 >

この作品をシェア

pagetop