空の果て星の息吹

不安定な時間

学園祭が終わり、学部試験が近づいてきた。
志望学部は第一志望を材質工学に絞っていた。


図書室に入り浸る毎日だった、数式や定数を覚える。星空を見てもまるで数字が浮いている感じすらもした

伯父夫婦への電話やクラスメートとのたわいもない会話・・それに月夜野ユイとのメールで気持ちは癒される。


ユイの第一志望は、新設学部の宇宙装機学部だった。ユイはてっきり涼子と同じ情報学部だと思っていたから不思議だった。


どちらかと言うと、宇宙装機(スペースワーカー)学部は、宇宙空間で作業するスペースワーカーを操作する知識を得る学部で将来は火星再開発本部(テラガイア)勤務が優先づけられているからだ。


女生徒の人気はエデン勤務が多いから、ユイの選択は意外だった。


閉校のチャイムが鳴り帰り支度を始めると、八神涼子も同じく勉強していて、声をかけた。


『今日、帰りに送って欲しいんだけどダメかな?』 

八神涼子は、異性なのに、あまり、それを感じない、独特の親しみやすい雰囲気がある。
それば、彼女が誰にでも親切で優しいという事があるかもしれないが。


『いいよ、ヘルメットを事務局に借りてきなよ?』 

バイク通学用に貸出しされているバイクヘルメットが置いてあるので、涼子は頷いて、事務局に借りにいった。


暫くすると、ヘルメットを借りて八神涼子は帰ってきた。


木枯らしが吹く中、銀杏並木を歩いてバイク小屋に向かった。


『ごめんね、急に・・何か遠野くんと話したくなってさ・・・』


涼子はうつむき加減で、話しながらスクーターの後ろに座らせた。


『いいよ、一人で帰るよりは二人がいいから』


涼子はスクーターが動くとびっくりして、後ろから腰に回す手に力が入る。


『怖くないから・・心配しないで・・』


『うん、怖いわけではないから・・安心して・・』


街灯がまばらに点く道を走りながら・・田園風景に似合わないライトアップされた巨大なシャトル発射台が見える。


今月末にエデンへ向かう資材搬入及び人員の補充をするシャトルの朱鷺(とき)だ。
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