空の果て星の息吹
同時多発的テロがあった日から丸2日経っていた。
都庁職員及び一般の行方不明者は130人。
死者は分かっている時点で70名にも及ぶ。


伯父の安否はまだ確定できないが、直前まで居た老婦人の話から、絶望的ではあった。


『母さん・・・父さんが・・・』


そこまで言うのが精一杯でそれを、察し伯母が頭を優しく撫でる。


『いいのよ・・・ソラ』 

伯母も分かっているのか何も言わずに嗚咽を殺しながら抱き締めてくれた。


僕は大切な人をまた失った・・・暖かな日の光にも似た優しい・・・大きな存在を。


でも、まだ伯母がいてくれるから・・・僕はまだ頑張らなければいけない・・・伯父の分も伯母を支えなければいけないから。


僕は、意識が戻ってから数時間後には退院していた。

急性パニック状態で意識を失っていただけの状態だったので、直ぐに退院手続きは出来た。


それよりも、ベッドの数が足りない状況であり病気側もそれを望んだ。

病院を後にして、伯母と2人で崩壊した都庁前に建てられた、仮設救助本部に向かった。


行方不明者や死傷者の安否を確認したかったが伯父の名前はなかった。


救助本部の事務所で行方不明者の登録をすませて、家から持ってきた薄型で音声も記録するカード式フォトモニターをあずけた。


救助隊は預けた写真等で死傷者を判断するからだ。


伯母は暫く崩壊した都庁跡で腰を降ろして何回も祈っていた。


跡形もなく倒壊した都庁の残骸を見ながら絶望的な状況になりながら、一握りの希望で折れそうなココロを支える。


あの優しい笑顔にもう一度逢いたい・・・今朝の夢の温もりが蘇る・・・


『父さん・・・』


何か言おうとするが言葉が詰まる・・・
ただただ・・・・涙が溢れる。


伯母がハンカチを僕に差し出す。
伯母の優しいぬくもりを感じながら、伯父を思い出す

良い思い出だけが駆け巡る



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