ユピテルの神話


運命ノ輪ガ、廻ル…


僕が通り、視界で揺れるのは青々と生い茂る木々。
木々からは緑色の優しい光が茶色の地面へと降り注ぐのです。

ここは深い森の中…。

葉の擦れるざわめきは、
小さく微かに、
時に僕に吹かれ大きく。

姿を隠した小さな虫たちの奏でる音色が心地よく、誰もが溜め息を漏らします。


緑色が混じり合いながら白く霞む霧の向こうでは、木々の合間から暗い空が覗きます。

紺色の空には、
月が輝いています。


アレハ…、僕ノ心。

ココハ…
僕ガ愛シタ世界。



僕は、風。


僕の心と彼女への愛が重なった時、一番幸せな心の僕は「風」になり、嬉しくて、この世界を一周するのです。


僕は、風。

風を仕えるのは、森の主。
早く世界を一周して、彼に報告しなくてはなりません。

綺麗な世界を見て廻り、また深い眠りにつかなくてはなりません。


世界を永遠に守り続ける為に。



白き花に…


マタ、

貴女ニ逢ウ為ニ……




< 142 / 171 >

この作品をシェア

pagetop