ユピテルの神話
†世界ヲ廻ルハ風ノ詩


†世界を廻るは風の詩


それから一年位は経ったのでしょうか。

エマとは会っていません。
村に住む人々とも、あまり交流を持ちませんでした。


やはり、自分から彼らに近付く事が怖かった。

僕の心は強くない。

彼らの言動の一つ二つで、僕の心がどうにかなり、世界が壊れてしまうかもしれません。
それを止める術を僕は知りませんでしたから。


それでも亡きロマとの約束もありましたので、村の情報は欲しかったのです。
密かに陰から、彼らを支えていたかったのです。


僕は犬竜ロマと共に、森の主を訪れる事が日課になっていました。

彼の元には、村人たちが度々訪れて色々な相談事をしていましたから、様子を聞く事位は出来たのです。

それも人々の訪れない、寝静まった時間に行動していました。


「こんばんわ、おじいさん。今日も変わりはないですか?」

僕は一本の大樹を見上げ、その根元に腰掛けました。
歩幅が小さく少し遅れてきたロマも、ちょこんと僕の横に行儀良く座ります。


『…あぁ、ユラ。そろそろ来る頃かと思っておったよ。今日はなぁ、ちと変わった情報があるんじゃ…』


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