ユピテルの神話
†悪魔ノ羽根


†悪魔の羽根


「…ロマ…、ロマ!」

僕は走りました。

村に近付けば近付くほど、大地の揺れは大きくなり、雨や風は強くなりました。

焦れば焦るほど、
上手く進めません。


「…はぁ…はぁ…」

僕は息切れを起こしてしまい、少し足を止めました。

膝に両手を付き、
村の方向へと焦る視線を送ります。


黒い厚い雲が…
村の上空を覆っていました。
逃げ惑う風たちが、
緑色の葉や土を巻き上げて集まっています。


「…!!風たち!ここに居ませんか!?ロマに落ち着け、と僕の声を村へ運んで下さい!」

そう叫び、辺りを見回せど、周囲には風一つ吹いていません。
怖くて、森に逃げ込んでしまったのでしょうか。


「…はぁ、はぁ…。僕が、風たちの様に飛べたら!この揺れにも負けず、雨にも負けずに…村まで進めたら…!」

そんな苛立ちを、
つい口にしていたのです。


『……ベルヨ…』

微かに、
そんな声が聞こえます。

僕が振り返った視線の先には、あの七色の花畑が在りました。


『…ユラ、飛ベルヨ…』

「…花たち、ですか…!?」


『…ユラ、背中ヲ見テ…』
『…背中ノ羽根ヲ使ッテ…』


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