現実(リアル)-大切な思い出-
「あげなさい」


「でもこれはっ!」


「いいじゃないの、星。貴女の方が、お姉さんでしょう?」


「お母さん…」


そのペンダントは、両親が私にくれた誕生日プレゼントだった。

2人が一緒に選んでくれた、最初で最後のプレゼント。

特別高価な物でもなかったけれど、私には何にも代えられない宝物だった。


私はペンダントを外し、女の子の首に掛けた。

そのペンダントを見て、女の子は目を輝かせた。

これを貰ったとき、私もきっとこんな顔をしていたに違いない。

いや、きっとこれ以上の笑顔だった。


「ありがとーお姉ちゃん!」


「‥いいえ」

私はどうにか、その言葉だけは呟いた。
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