現実(リアル)-大切な思い出-
「幸姉…」


会話のなくなった部屋で、幸姉の鳴き声が響く。


俺はただ呆然と、その鳴き声を聴いていることしかできなかった。





火月くんを引き取ることに決めたのは、それから2日後のことだった。


理由は、幸姉と火月くんをこのまま一緒に居させてはいけない‥そう感じたからだ。

そして、それは幸姉と火月くんへの“償い”でもあった。


幸姉の相談に乗ってあげられなかったことへの償い。

そして、そのために幸姉が火月くんを手放そうとしていることへの償い…。


たとえ俺が、あのとき話を聴いていたとしても、結局は何もできなかったかもしれない。

けれど、何かが変わっていたようにも思える。

少なくとも、幸姉が限界を迎えることは、なかったのではないだろうか。

そう思うと、表現しようのない罪悪感が俺を襲った。


「それじゃ、火月。行こうか」

車の前に立つ火月に、声を掛ける。


もう『火月くん』とは呼ばない。

もう他人ではなく、家族になったのだから…。
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