〜花魁〜



月明かりだけが入り込む部屋で

暗闇に浮かんだ人影に

思わず[空]って言いそうになった――。





「なんでぇー…?」



いつもは、断った時点で引く花も
今回は何故か引かない。



『朝…だから?』


なんて、相変わらず見え透いた嘘をつく。



「時間なんか関係ないやん。しかも、何で疑問系?」



せやけど――。

間違いないけど!!

困った…。



『ごめんな。無理やねん。中途半端に出来ひん』



[空]って、口から出そうになる恐怖感を抱きながら、出来ひんやろ―。

いくら俺でも、そこまで無神経で酷い男じゃない。



「………。」


黙り込む花を見て“さすがにマズかったかな?”なんて思ったけど

今更、言った言葉を消せる訳でもないし
言い訳も見苦しすぎる。



『待っててよ―…』


「えっ?」




.
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