She and I・・・

★20★ ~星・新しい約束

彼女の志望校合格のご褒美--バイクに乗せる約束--は、なかなか実現しなかった。
バタバタと入学式も終わってしまい、新入生歓迎会の後しばらく連絡の付かない時期が過ぎ、梅雨をさけるともう夏休みだった。

夏休みに入ってすぐの天気の良い日、
バイクで大宮家に迎えに行った。

彼女と最初に出逢ったのは、2年前のこんな日だったと思いながら、いつもの裏道ではなく玄関の側にバイクをとめた。

すぐに玄関から彼女が現れ、少しあとに彼女の母親も出てきた。
教授はいないのか出てこなかった。
少しほっとしてしまった。

彼女は僕に言われた通り、長袖の上着を着てジーパンを穿いていた。
「かっこいい?」
と彼女は訊いてきた。
普段の彼女のスタイルとは違っていたから見慣れない感じだったが、ボーイッシュな格好も良く似合っていた。
「うん。似合ってるよ」と言いながら、ヘルメットを渡した。

彼女はヘルメットをかぶり、今度は母親にむかって
「かっこいい?」
と訊いていた。

「はいはい」
と彼女の母親は娘に軽く返事をした。

「しっかりつかまって、そして身体の力を抜いて」
と彼女にいい、腰につかまらせた。

いつも隣に並んで座るベンチとも違って、ドキドキしたが母親に見られていることのほうにドギマギしていた。

「奈良さん、よろしくお願いしますね」
と彼女の母親は僕に言った。

よろしくお願いされてしまった僕は、
「無事に戻ります」
としゃちほこばって言い、そそくさと出発した。

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